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事業譲渡例64|後継者不在の塾 ニーズ合致によるスピード契約

2025年9月8日
譲渡例(今までのケース)

こんにちは!「学習塾売却のセカチャレ」を運営する株式会社インフィニティライフの吉田です。
本稿では、静岡県の自立学習型の学習塾が、後継者不在を背景に閉塾と譲渡の岐路で悩まれた末、地元へUターン予定の教育事業者(買い手さま)と出会い、ニーズの合致によって短期間で成約に至った事例をご紹介します。年度末の譲渡を見据えて早期に契約を結び、長い引き継ぎ期間を確保したこと、屋号変更は引き継ぎ期間中に慎重に判断する方針としたことが、スムーズな承継につながりました。

学習塾事業概要


・所在地:静岡県内

・指導形態:自立学習塾

・在籍生徒数:10〜20名規模

・年商:約580万円

・営業利益:約280万円(教室長給与を含まず)

・運営年数:5年

・譲渡金額:税込33万円

事業譲渡を決めた背景


売り手さまはご年齢を踏まえて年度末での閉塾を予定していましたが、地域の学びの場を残したい思いと、原状回復や什器撤去など閉校コストの重さから、第三者への承継を検討されました。集客は口コミ中心で、生徒数の伸び悩みもありましたが、教室設備は充実しており、適切な運営リソースが入れば十分に再成長し得る余地があると判断。買い手さまは学校教員として10年以上のキャリアを持ち、移住を機に公教育では実現しにくい教育を志して独立を決意されていた方でした。双方のニーズが一致し、譲渡の検討が一気に加速しました。

タイムライン


今回の買い手さまとは、まず担当者面談で相互理解を深め、その後オンラインのTOP面談から現地面談までを約2週間で実施しました。続いて約1週間で基本合意に到達し、譲渡契約はその約2週間後に締結。お盆休みを挟んだ条件下でも、問い合わせから契約までテンポよく進み、2025年8月に成約しています。年度末の引き渡しを見据えて早期に契約を結ぶことで、買い手さまが現場を理解し保護者と信頼関係を築くための長い移行期間を確保できました。

募集開始〜基本合意

市場で評価されたのは、第一に“引き継ぎのしやすさ”です。自立学習に必要な機材やブースが既に揃い、空気清浄機も適切に配置されているため、初期投資が小さく、家賃水準も抑えられていました。第二に“ブランドの再設計がしやすい条件”です。閉塾前提で募集したため、既存在籍に対して新ブランド前提のご案内が行いやすく、方針転換のコミュニケーションが取りやすい環境でした。お問い合わせは新規で塾事業に挑戦したい層が中心で、教室長交代によるハレーションを懸念する声もありましたが、自立学習の運営方針が明確で、サービス提供のギャップが生じにくいことをご理解いただいた方からは前向きな反応が得られました。選定は担当者面談、オンラインTOP面談、条件調整を経て、必要十分な情報のもとで譲渡契約へと進みました。買い手さまが重視したのは、譲渡後に好きなブランドへ機動的にカスタマイズできる柔軟性です。

DD(デューデリジェンス)〜契約

デューデリジェンスでは、賃貸借契約の解約・新規に伴う条件変更の可能性を重点確認しました。保証会社の審査や原状回復条項、看板の扱いなどを事前に整理し、家主・管理会社とのコミュニケーション計画を明確化。金融機関からの融資は利用せず、スキームはシンプルな事業譲渡です。主条件として屋号は変更予定ですが、保護者の受容性や地域の認知への影響を見極めるため、引き継ぎ期間中に最終判断することとしました。例外規定として、家主が承継を認めない場合や家賃の大幅な増額が生じる場合は、契約を見直す条項を設け、実務上の安全装置としています。

PMI(引継ぎ)

人の面では、譲渡契約から譲渡日までの期間に、売り手さまと買い手さまが現場でのOJTを行い、授業運営や問い合わせ対応の型を丁寧に共有しました。顧客コミュニケーションでは、売り手さまが閉塾案内と同時に“譲渡後の後継塾”をご案内し、保護者面談で移行方針と連絡導線を個別に確認して不安を払拭しています。契約関連(賃貸名義変更、保証審査、サプライヤ切替)は計画通りに進み、IT・運用(学習システム、広告アカウント、Googleビジネスプロフィール等)の移管もつつがなく完了しました。外向きの広報は抑制し、在籍生徒と保護者への丁寧な周知を優先して混乱を避けています。

KPI


クロージングからの期間が短く、直近3ヶ月の確定値はまだ示せません。6ヶ月・12ヶ月の在籍数、退会率、粗利などの主要指標は、移行後の安定運営とブランド方針の最終決定を踏まえてモニタリングし、確定次第、追って更新します。

リスクと対応

まず懸念されたのは賃貸条件が大きく変わる可能性でした。ここは初期対応を売り手さまが主導し、買い手さまへ丁寧に引き継いだうえで、家主・管理会社へ三者で説明の場を設け、誤解や齟齬を防いでスムーズに条件を確定しました(時期:最終契約後すぐ〜クロージング前)。次に生徒離脱のリスクについては、譲渡日前から買い手さまが教室に顔を出して授業や質問対応に入り、“新しい先生”として自然に馴染んでいただく工夫をしました。そのうえで個別面談で保護者へ後継者として正式にご紹介し、運営の連続性を丁寧に説明したことで、不安の抑制に成功しています。ブランド変更による戸惑いについては、屋号変更を前提としつつも引き継ぎ期間で段階的に判断・実施する方針を取り、受容性を見ながら移行することで混乱を回避する計画です。

学び


賃貸借契約の解約・新規は、売り手さま主導から買い手さまへの移管を段階的に設計し、家主・管理会社と早期に三者で対話の場をつくると手続が速やかに進みます。また、閉塾案内という売り手さまにとって心情的に負担の大きいコミュニケーションでも、“同じ場所で継続できる後継塾”を同時にご案内できることで、保護者の安心感と実務の円滑化の両立が図れます。さらに、ブランドは急いで変えず、引き継ぎ期間で受容性と効果を検証してから段階的に移行することで、在籍維持と再成長の両立がしやすくなります。

終わりに

本件は、後継者不在による閉塾の悩みから、地域に学びを残す“第三者承継”へ舵を切り、買い手さまのUターンと教育ビジョンが重なったことで短期間に成約へ至った好例です。早期契約で引き継ぎ期間を長く確保し、屋号変更は拙速に決めず移行期に判断する方針が、現場の安心とスムーズなPMIに直結しました。類似の状況でご検討中の経営者さまは、在籍・月謝・賃貸・設備の一次情報を棚卸しし、移行計画と保護者コミュニケーションをセットで設計することから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

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著者・監修・根拠

著者プロフィール:M&Aアドバイザー 吉田 諭
首都大学東京都市教養学部卒業(現・東京都立大学)後、大手教育系企業、建材メーカーを経て、株式会社インフィニティライフに入社。学習塾事業、学習塾M&A事業を専門に、100件以上の学習塾案件を支援、30件程度を成約に導いた。
根拠リンク(行政資料/ガイドライン/統計 等):株式会社インフィニティライフは、中小企業庁のM&A支援機関に登録しています。
https://ma-shienkikan.go.jp/search?corporate_name=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95
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