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事業譲渡例62|ベテラン講師のノウハウ承継と現代営業の融合 株式譲渡

2025年4月14日
譲渡例(今までのケース)

セカチャレは、学習塾専門の株式、持分、事業売却のサポートサービスとして、今まで300件以上の学習塾売却に携わってきました。

学習塾経営者様の方には「株式売却、持分売却、事業売却は大規模な企業の話、自分には関係のないことだろう。」と考えている方も多くいらっしゃいます。

しかし、

・学習塾を閉校したいが、生徒や講師のことを考えるとやめられない

・体調面に不安があるが、引き継ぎ手がいない

・別の事業に集中したい

という方にとっても、株式売却・持分譲渡・事業売却は1つの選択肢となります。売却をすることがどのようなことなのか、それにより得られるものは何なのか、当ブログでご紹介します。

学習塾事業概要

■教室所在地
東京都23区東部

■指導形態
個別指導

■生徒数
50~60名

■売上高
約1,600万円

■営業利益
約300万円

■譲渡金額
165万円(税込)

■案件ページ

【至急/開校20年以上/高層住宅エリア】東京23区東部の個別指導の事業譲渡

1.譲渡の背景

1998年の開校以来、東京都23区内で25年以上にわたり、少人数制の集団指導塾を運営してきたA社。小・中・高校生を対象に、プロ講師による授業だけを提供し、地元では高い指導力に定評のある塾でした。生徒数は常時50~60名ほど。受験対策はもちろん、学校の先取りや学習習慣の定着といったニーズにも応えてきました。

しかし長く続けてきたからこそ、組織の更新が難しくなってきた側面もありました。創業当初のメンバーを中心とした体制は変わらず、指導の質は高いままでしたが、経営体制そのものはなかなかアップデートされずにいたのです。

「このまま惰性で続けるよりも、誰かに引き継いでもらい、塾として次のステージに進む方がいいのではないか……」

そう考えたA社の経営陣が、閉校も視野に入れつつ「想いを受け継いでくれる譲受先」を探し始めたことが、本件の出発点でした。


2.譲渡を決断した理由

経営状況に深刻な問題があったわけではありません。ただ、長年同じ体制で走ってきたことで、IT活用やブランディングといった“今の時代に必要な改善”に対応しきれていないという課題が、経営側にも自覚としてあったようです。

これまで築き上げてきた指導ノウハウや教室運営の文化を無駄にしたくない。だからこそ、「教育方針をしっかり理解し、発展させてくれる相手に託したい」というのが譲渡に踏み切った最大の理由でした。


3.譲受企業との出会い

今回、譲受側となったのは、すでに弊社セカチャレを通じて複数の塾買収を経験されている法人の塾経営者様。すでに少人数制の塾を複数運営しており、「新しい地域でも展開していきたい」という明確なビジョンをお持ちでした。

対象の教室とは物理的な距離があったものの、「ノウハウを吸収したい」「すでに完成された運営体制をそのまま生かしたい」との意向があり、早期にマッチングが成立。特に、A社に在籍していたベテラン講師陣6名の継続雇用が前提であることが、B社にとっても大きな魅力だったようです。

「優秀な講師陣の指導力は、まさに私たちが求めていたもの。あとはそこに“今の時代の戦略”を掛け合わせるだけで、大きな可能性を感じました。」


4.交渉プロセスと譲渡条件

● スケジュールの流れ

  • 募集開始から約2ヶ月で基本合意
  • そこからさらに約3ヶ月で最終契約

最初のご相談から契約締結までは5ヶ月程度と、比較的落ち着いたペースで進行しました。交渉において特別大きな問題はなく、信頼関係を築きながら着実に一つずつ条件を詰めていった印象です。

● 譲渡条件

  • 譲渡スキームは株式譲渡
  • 譲渡価格は1,500万円
  • 経営陣・講師陣は全員講師として雇用継続
  • 社名・屋号は変更せず、系列塾との“ゆるやかな連携”を予定

また、デューデリジェンスでは総勘定元帳の確認個人保証の解除従業員の契約内容の明確化など、法人譲渡特有の論点についても丁寧に対応を進めました。


5.譲渡後の変化と展望

譲渡後、元の経営陣や講師陣は全員が講師として継続勤務しており、生徒や保護者にとっては「何も変わらない安心感」が保たれています。

一方で、B社が得意とするWebマーケティングIT導入支援が今後の大きな変化の一つになる予定です。デジタルツールの導入や教室運営の“見える化”によって、これまで手が届かなかった部分を改善しながら、さらなる教室価値の向上が期待されています。

B社としても、「いきなり手を加えるのではなく、まずは現場の声を丁寧に聞きながら、少しずつアップデートしていく」という方針で臨んでいます。


6.関係者の声

● 譲渡元のオーナー様(A社)

「創業当初のメンバーと20年以上一緒にやってきて、まさに“家族のようなチーム”でした。正直、閉校も考えたのですが、講師の仕事を守り、子どもたちの学び場を残せる形で譲渡ができて、本当に良かったです。」

● 譲受先の経営者様(B社)

「プロ講師の技術や、生徒一人ひとりを大切にする姿勢に感銘を受けました。私たちが持っているデジタルの知見と掛け合わせることで、さらに成長できる塾にしていきたいと思っています。」


7.まとめ

この事例は、「良い塾であっても、組織が長年変わらないままだと限界が来ることもある」という、ある意味では学習塾経営の“リアル”を感じさせるものでした。けれど、だからこそ今回のように、「想い」と「技術」を次の担い手に繋げることができたのは、私たちにとっても非常に意義深い経験でした。

学習塾のM&Aは、単なる“経営権の移転”ではありません。人の想い、地域の信頼、子どもたちの居場所をどう守り、どう広げていくかという、教育そのものに関わる選択です。

今後もセカチャレでは、こうした「価値あるバトンの橋渡し」を一つひとつ丁寧に行ってまいります。

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