こんにちは、セカチャレを運営する株式会社インフィニティライフの高木です。
「いつかは自分の理想を形にする塾を立ち上げたい」
そのように考えている学習塾業界の方は多くいらっしゃると思いますし、実際に独立は人生最大の勝負です。しかし、いざ準備を始めると「最初の10人をどう集めるか」「内装や保証金で資金が削られる」という過酷な現実に直面することが多いと聞きます。
私たちは、自社で学習塾を立ち上げた経験も、M&Aで学習塾を買収した経験もあります。さらに、5年以上の学習塾のM&A支援を通じて感じているのは、「0から1を作る苦労をスキップし、最初から生徒がいる状態でスタートするM&A(事業承継)」は、現代の起業において極めて勝率の高い選択肢であるということです。
なぜ、リスクに敏感でリテラシーの高い起業家ほど「新規開校」ではなく「継承」を選ぶのか。その圧倒的な合理性を、現場の感覚・データとともに徹底解説します。
目次
学習塾は、月謝が積み上がる「ストック型ビジネス」です(卒業というフェーズがあるので、必ずしもそのように言えるかは微妙なところはありますが)。このモデルにおいて、最も苦しく、かつ精神的に不安定となるのは「生徒が0人〜20人程度の時期」のフェーズです。
・新規開校:物件を借り、チラシを撒き、1人目の問い合わせを待つ。損益分岐点の達し、収益が安定するまでに1年、2年とかかることは珍しくありません。その間の家賃や人件費はすべて「持ち出し」になります。
・M&Aでの承継:引き継ぐ教室の規模にもよりますが、譲渡を受けた初日から、すでに20名、30名の生徒が月謝を支払っている状態でスタートできます。
スタート時の売上(トップライン)のベースが高いことは、経営者のメンタルに絶大な安定をもたらします。「自身の生活費を心配しながら塾長として運営を行う」のと、「安定した運営基盤の上で、さらなる生徒増のための施策を練る」のとでは、経営判断の精度に雲泥の差が生まれると感じます。
イチから学習塾を立ち上げること、既存の教室を引き継いでスタートすること、それぞれ「目に見えるコスト」と「目に見えないリスク」を比較表にまとめました。
| 比較項目 | 新規開校 | M&A(事業承継) |
| 初期費用 | 物件契約、内装、備品、広告で200万円〜 | 譲渡金+物件契約+諸費用で300万円〜(規模による) |
| 生徒集客 | 0名からスタート。それなりの広告費が必要 | 初日から在籍あり。集客コストを大幅削減 |
| 人材確保 | 講師の採用・教育に数ヶ月を要する可能性あり | 指導に慣れた講師陣をそのまま引き継げる |
| 収益化時期 | 12〜24ヶ月後(赤字期間をある程度想定) | 初月から黒字、または早期の黒字化が可能 |
| 最大の懸念 | 1人も生徒が集まらない「ゼロリスク」 | 既存生徒の離脱 |
0から10人、20人と生徒を集める労力は、既存の20人を30人、40人に増やす労力の数倍から十数倍かかります。この「最初の壁」をショートカットできることが、M&A最大の価値です。
M&Aで手に入れるのは、箱(教室)や数字だけではありません。0から作ろうと思えば数年、あるいはそれ以上の歳月がかかる「無形資産」を、契約したその日に手に入れることができます。
「あそこに塾がある」「あそこは〇〇中学の生徒が多く通っている」という近隣保護者や生徒の間での認知は、一朝一夕には築けません。たとえ個人塾であっても、その場所で数年続いているという事実は、地域社会における「信頼の貯金」と言えるかもしれません。
現在の学習塾業界は、空前の採用難です。以前は時給が高いことで人気であった塾講師も、今では他の業種とほぼ同様の水準となり、場合によっては長く働くことができないことから、人気が落ちていると言えます。
大手塾ですら講師確保に苦労する中、すでに校舎のカラーを理解し、生徒と信頼関係ができている講師が残ってくれることは、金銭に換算できないほどの資産価値があります。
現場を切り盛りしてきたスタッフ、特に教室長人材がいれば、オーナーであるあなたは「経営」や「新規集客」に集中できます。マニュアル化されていない「現場の知恵」を引き継げることは、起業初期のミスを激減させます。
M&Aにはメリットが多い反面、注意すべき点もあります。学習塾を買収する際にあたっては、最低限、以下の項目をチェックしておくと良いかもしれません。
1.退会者数の推移と理由:直近1〜2年で生徒が急減していないか。特に、その理由が内的要因によるものなのか、外的要因によるものなのか。対策が考えられるかどうかが、譲渡後の生存戦略に影響します。
2.教室長・講師の「継続意思」の確認:オーナー交代を機に、主力講師が辞めてしまわないか。一般的に、M&Aは成立まで講師に話をすることはありません。よって、あくまで想定になってしまいますが、前オーナーが外れる時の影響は、イメージしておけるようにしたいです。
3.賃貸借契約の新条件:近年の地価高騰、さらに学習塾は長年同じ物件で運営をしている案件も多く、経営交代を機に、賃貸借契約の条件が大きく見直されることが増えています。
どの程度条件が変わってくるのか、ある程度確認をしておく必要があるかもしれません。
4.近隣の競合状況:半径1〜2km以内にどのような競合教室が存在するのか、同じ指導形態の塾が多いのか、知っておいた方が良いです。
5.生徒・保護者の満足度:数字には表れない「教室の雰囲気」や「活気」は、実際に教室に足を運んで肌で感じることができると考えております。
これらの調査を、譲渡を受ける前にきちんと行なっておくことができれば、M&Aのリスクを下げることができます。
譲渡金、仲介手数料、賃貸借契約の切り替え費用、そして数ヶ月分の運転資金。これらを合わせ、最低でも300万円程度を見込んでおけば、小規模な塾のオーナーとしての第一歩を踏み出せます。
自己資金では不安があるという場合も、金融公庫の創業融資を活用するなどして、買収を検討することが可能です。
未経験から参入して成功する方に共通していると感じることは、「良い授業(コンテンツ)」と「生徒集客(マーケティング)」は別物であると理解していることです。
前オーナーが築いた良い部分は「前例踏襲」で守りつつ、自身の経験や異業種で培った視点で「集客や運営をブラッシュアップ」する。この「守破離」のバランス感覚がある方は、驚くほど早く校舎を成長させます。
良い案件ほど、売り手さまは「誰に譲るか」をじっくり検討する余裕があります。単に条件面で合意に至るか、というだけではなく「この人に譲れば安心だ」と思ってもらえるかどうか、がカギになることが多いと感じます。
リスペクトと信念:創業者が大切にしてきた塾への敬意を持ちつつ、「自分が引き継いで、さらにこう伸ばしたい」という強い意志があること。
「投資目的」の出しすぎに注意:「儲かりそうだから」という姿勢が前面に出てしまうと、教育に情熱を注いできた売り手は、少し懸念を抱くような印象があります。もちろん、前提としてビジネスですので、利益を出さなければいけません。あくまで表現や接し方の中で、その部分をどれだけ露出させるのか、というバランスが重要であると考えます。
1人目の生徒に入塾してもらうこと、そして10人、20人と生徒を増やしていくことは、並大抵の労力ではありません。うまくいかない時期の精神的な不安定さは、経営者として非常に辛いものであると考えます。
もしあなたが「自分の理想の教育を届けたい」という情熱を持っているなら、その貴重なエネルギーを「0→1の集客苦労」に費やすのではなく、「今いる生徒をどう伸ばし、どう喜ばせるか」に全振りすることも、是非選択肢の1つとして考えてみてください。
最初から20名、30名の生徒がいる安心感。それをベースにした独立は、あなたの人生をより確実な成功へと導くはずです。是非、少しでもご興味いただけるようであれば、セカチャレにお問い合わせください。
この記事の著者

取締役 M&Aアドバイザー 高木直人
埼玉大学教育学部卒業後、大手教育系企業、私立中高一貫校講師を経て、株式会社インフィニティライフに参画。学習塾事業、学習塾M&A事業の責任者として、100件以上の学習塾案件を支援、40件程度を成約に導いた。2023年に株式会社バトンズが選ぶベストアドバイザー賞にノミネート。
・よくある質問
・お問い合わせはこちら
★株式会社インフィニティライフは、中小企業庁のM&A支援機関に登録しています。
https://ma-shienkikan.go.jp/search?corporate_name=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%