こんにちは!「学習塾売却のセカチャレ」を運営する株式会社インフィニティライフの高木です。
セカチャレは、学習塾専門の株式、持分、事業売却のサポートサービスとして、これまで150件以上の学習塾の承継に携わってきました。学習塾経営者さまの中には「株式売却や事業譲渡は大企業の話」と感じる方も少なくありませんが、個人塾でも“生徒・講師の居場所を守りながら事業を引き継ぐ”現実的な選択肢になり得ます。
今回は、大阪府南部で約20年運営してきた個人塾が、60代の売り手さまから20代の若手経営者さまへバトンを渡した事例です。家庭への配慮からクロージング後もしばらく売り手さまが伴走し、買い手さまは兵庫から大阪へ移住して運営に専念することになりました。今回の案件において、その背景やプロセス、引継ぎの要点を整理します。
目次
●教室所在地
大阪府南部
●指導形態
個別指導と映像学習の併用(自立学習を取り入れた運営)
●生徒数
約25名
●売上高
年商約1,200万円
●営業利益
約300万円(オーナー人件費を除く)
●運営年数
約20年
●譲渡金額
0〜200万円
●体制・運営
講師は業務委託1名。広告に依存せず口コミと継続で安定集客。少人数でも回る運営設計。
●保護者周知・同意
季節講習前の個別面談に買い手同席。運営体制が大きく変わらないことを丁寧に説明。
●賃貸契約
解約→新規契約の方針。売り手・買い手が大家と対面で面談し、条件交渉を実施。
長年地域に根ざしてきたものの、年齢面を踏まえて売り手さまは引退を検討。身内・内部に後継者が不在だったため、第三者承継で生徒・講師の“居場所”を守る道を模索しました。
昔からの学習塾経営者仲間からセカチャレを紹介され、2024年冬にご相談。複数回の面談を経て、2025年2月頃から本格交渉を開始し、6月に最終契約を締結しました(決済は9月)。
このご紹介くださった方は、弊社のサービスを利用するも最終的にはご自身で学習塾を継続することを決断されましたが、好印象をもってくださったようで、ご紹介いただいたとのことでした。
最も評価されたのは、広告に頼らずとも安定して生徒が集まる顧客基盤と、少人数で回る運営設計でした。映像学習を取り入れた自立型の仕組みは、買い手さまが教室長として入りやすく、立ち上がりのリスクが低い点も支持されました。
オンライン面談→現地面談→意向表明→基本合意という流れで選定。最終的な買い手さまは、学生時代の塾講師アルバイト経験に加え、起業経験と大企業勤務の双方を持つ20代。オーナー兼教室長として現場に立つ意思が明確で、現行の強みを崩さず伸ばすという姿勢が売り手さまと合致しました。
机や面談スペースの配置、備品、PC環境などを実地確認。事前に概要書で競合状況を把握した上で、周辺を歩いて通塾導線や生活動線の肌感もすり合わせました。季節講習前の保護者面談には新旧の運営者がが同席し、方針不変をお伝えすることで安心感を醸成しました。
顧客面では、生徒ごとの月謝構成とLTVを精査。運営面では、映像学習の運用ルールと学習履歴の引継ぎ手順を確認。
契約面では、賃貸借契約の切替に伴う条件変更(保証会社審査、原状回復の取り扱い)を洗い出しました。金融機関からの融資は利用せず、スピード感を持って合意形成を進めることができました。
売り手さまが個人事業主のため、スキームは事業譲渡を採用。クロージング後もしばらく売り手さまが現場に伴走することを契約に明記し、運営の連続性を担保しました。
例外規定として、大家が承継を認めない場合や家賃が大幅に上がる場合は契約見直しとする“安全装置”を設けています。
クロージング直後は“変えすぎない”方針で、現状の時間割・教材運用・保護者連絡を踏襲。名義変更や各種アカウント移管は滞りなく完了しました。
広報については外向けの大きな発信は控え、保護者と生徒への個別周知を優先。売り手さまの伴走が安心材料となり、離脱はゼロでスタートを切れています。
買い手さまは兵庫から大阪へ移住し、教室運営に専念できる体制が整いました。
賃貸条件の変動リスクに対しては、売り手・買い手が同席し、家主・管理会社に対面で意向と計画を丁寧に説明。関係性を築いたうえで条件交渉を進めました(実施タイミングは最終契約後すぐ〜クロージング前)。
生徒離脱、とりわけ受験生の不安には、新旧同席の保護者面談で「変えないところ」を明確化。さらに、そろばん指導の委託先には先行して説明し、同意を得たうえで手続きを進行。いずれも想定課題を未然に抑える結果となりました。
このような学習塾ならではのリスク管理は、個人間で進めるうえでは意外と見落としてしまうポイントとなります。セカチャレのサービスを利用していただくことで、このようなリスクを回避することができます。
第一に、賃貸借契約の切替は三者(売り手・買い手・家主)で早期に対話し、信頼形成と条件調整を同時に進めること。
第二に、保護者説明は新旧同席で行い、「何が継続され、どこを段階的に改善するのか」を言語化して離脱を抑止すること。
第三に、クロージング直後は既存運用を尊重し、季節講習や映像学習の設計を維持したうえで、データ(LTV、問い合わせ動向)を見ながら改善点を小さく積み上げることです。
第三者承継は、後継者不在の個人塾でも、地域の学習機会やスタッフの雇用を守りながら未来へつなぐ有効な打ち手です。本件は、売り手さまの伴走と、買い手さまの現場コミットメント、そして保護者・家主との丁寧なコミュニケーションにより、ソフトランディング・顧客のきちんとした引き継ぎを実現しました。
まずは一次情報(生徒ごとの月謝構成、LTV、賃貸条件、アカウントの棚卸し)を揃え、合意形成の土台を整えるところから始めることが重要です。
取締役 M&Aアドバイザー 高木直人
埼玉大学教育学部卒業後、大手教育系企業、私立中高一貫校講師を経て、株式会社インフィニティライフに参画。学習塾事業、学習塾M&A事業の責任者として、100件以上の学習塾案件を支援、40件程度を成約に導いた。2023年に株式会社バトンズが選ぶベストアドバイザー賞にノミネート。
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★株式会社バトンズが主催する2025年M&Aプロフェッショナルアワードにて「成約賞」を受賞しました。