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事業譲渡例63|塾への挑戦 ノウハウの継承

2025年9月8日
譲渡例(今までのケース)

こんにちは!「学習塾売却のセカチャレ」を運営する株式会社インフィニティライフの吉田です。

セカチャレは、学習塾・スクール領域に特化したM&A支援(株式・持分・事業譲渡)を行っています。今回は、千葉県北西部で15年以上、夫婦二人三脚で運営されてきた個別指導塾の事業承継事例です。買い手さまは“塾運営への初挑戦”。譲渡日以前から現場へ参画し、売り手さまと並走しながらノウハウを引き継ぐことで、生徒離脱ゼロ・承継後の在籍増につながりました。

学習塾事業概要

・所在地:千葉県(北西部エリア)

・指導形態:個別指導

・生徒数:10名以下

・売上高:年商約370万円

・営業利益:赤字(オーナー報酬・設備費等含む)

・運営年数:15年以上

・譲渡金額:0万円

事業譲渡を決めた背景


売り手さまは長年の運営で地域に根づいてきた一方、ご夫婦のご負担が増していました。近年は在籍が伸び悩み、広告投下を抑えたこともあって収益性が悪化。

教室を閉じる選択肢も検討されましたが、原状回復や什器撤去にかかる費用、そして何より生徒の学習継続への影響を踏まえ、第三者承継という結論に至りました。

セカチャレは“撤退コストを抑えつつ学びの場を残す”設計をご提案し、支援を開始しています。

タイムライン

・2025年1月:初回相談・利用開始

・〜2週間:担当者面談→オンラインTOP面談→現地TOP面談

・その後約1週間:条件すり合わせ→基本合意

・約1か月:譲渡契約締結(スピード譲渡)

募集開始〜基本合意


市場で評価されたのは、地域に「この場所に塾がある」という認知が浸透している歴史的蓄積と、長期利用にもかかわらず内装や什器が綺麗で追加の修繕を要しない点でした。

お問い合わせは新規に塾事業へ挑戦したい方が中心で、とりわけ駅前よりも住宅地で地元密着を志向する買い手さまから教室見学の希望が相次ぎました。

プロセスは、担当者面談からオンライン・現地のTOP面談へと進み、基本合意を経て譲渡契約へ。

最終候補となった買い手さまは金融・コンサル業界で経営理論を磨き、独立の第一歩として学習塾への参入を決断されました。

最重要視したのは「在籍生徒を現在の状態のまま引き継げること」であり、セカチャレは保護者コミュニケーションと現場オペの“踏襲プラン”を整備して合意形成を後押ししました。

DD(デューデリジェンス)〜契約


財務面では、実入出金の原票確認を通じて、季節講習・教材費の収受や未収の有無を丁寧に点検しました。

賃貸は解約・新規に伴い、保証会社審査、原状回復条項、看板や共益費の取り扱いを事前に整理。

スキームは事業譲渡で、屋号は継続使用と合意しています。

さらに、家主が承継を認めない、または家賃が大幅増となる場合には契約の見直しを行うという例外規定を安全装置として設定しました。

結果として想定外の論点は発生せず、計画どおりにクロージングへ至りました。

PMI(引継ぎ)と初動

人の面では、譲渡契約から譲渡日までの期間に売り手さまと買い手さまが現場でOJTを重ね、アルバイト2名のシフト、役割、評価基準を明確化しました。

合わせて、買い手さまの現場裁量と最終意思決定ラインをはっきりさせ、初日からの運営に迷いが生じないように設計しています。

顧客対応では、譲渡日前から買い手さまが授業や質問対応に入ることで、生徒が自然に受け入れられる状況を先につくり、保護者には個別面談で売り手さまから正式に後継者として紹介しました。

当面は運営と料金の据え置きを明言した結果、離脱ゼロでの承継に成功しています。

契約やITの移管も予定通り完了し、賃貸名義変更、サプライヤの切替、電話・メール・LINEなど連絡導線の棚卸しを実施。

学習システム、広告アカウント、Googleビジネスプロフィールも適切に引き継がれました。広報については外向けの大きな発信を控え、在籍生徒と保護者への個別周知を優先する方針で進めています。

リスクと対応

最初に想定したのは賃貸条件の変更リスクでした。

ここは初期対応を売り手さまが主導し、その内容を買い手さまへ綿密に引き継いだうえで、家主・管理会社に三者で丁寧に説明することで、齟齬なく条件を確定できました。

次に生徒離脱の可能性に対しては、譲渡日前から買い手さまが先生として現場に入り、保護者には個別面談で後継者紹介と方針据え置きを明確化することで、不安を先回りして解消しました。

ブランド変更の困惑は、本件が屋号継続であるため影響は限定的で、看板や紙面、連絡ツールの表現を段階的に調整し、学習体験の連続性を担保しています。

学び


賃貸の解約・新規は、売り手さま主導から買い手さま移管への二段構えにすると滑らかに進みます。

特に家主・管理会社との“三者同席の早期面談”は、その後の手続全体を加速させる有効な打ち手です。

また経営者以降に関しては、単なる説明会に終始せず、譲渡日前から買い手さまを現場に馴染ませることで、生徒・保護者が変化を体感的に受け入れ、離脱抑止に直結します。

さらに、たとえ0円譲渡であっても、ノウハウ継承と地域の学びの継続には大きな価値があり、運営は「踏襲→小規模改善→標準化」の順で、在籍、問い合わせ、稼働コマなどのKPIを見ながら進めるのが得策です。

終わりに

地域に根差した小規模個別指導塾の知見を、買い手さまのフレッシュな運営力へと橋渡しした事例でした。売り手さまの丁寧な伴走と、買い手さまの現場コミットメントが噛み合い、離脱ゼロ・在籍増という好スタートを実現。個人塾の承継をご検討の方は、在籍・月謝・賃貸・講師体制の“一次情報”を棚卸しし、保護者・家主を含む関係者の合意形成を設計するところから始めてみてください。

よくある質問

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著者・監修・根拠

・著者プロフィール:M&Aアドバイザー 吉田 諭

首都大学東京都市教養学部卒業(現・東京都立大学)後、大手教育系企業、建材メーカーを経て、株式会社インフィニティライフに入社。学習塾事業、学習塾M&A事業を専門に、100件以上の学習塾案件を支援、30件程度を成約に導いた。

https://ma-shienkikan.go.jp/search?corporate_name=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95

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