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事業譲渡事例65|個人塾から大手FC教室に。既存教室の譲渡を受けて店舗展開

2025年9月10日
譲渡例(今までのケース)

こんにちは!「学習塾売却のセカチャレ」を運営する株式会社インフィニティライフの高木です。


セカチャレは、学習塾専門の株式・持分・事業譲渡のサポートサービスとして、これまで200件以上の学習塾の承継に携わってきました。学習塾経営者さまの中には「売却や事業譲渡は大企業の話」と感じる方も少なくありませんが、個人塾でも“生徒・講師の居場所を守りながらバトンをつなぐ”現実的な選択肢になり得ます。


今回は、東京都23区東部で約10年運営してきた個人塾が、大手フランチャイズ(FC)チェーンへ事業譲渡された事例です。売り手は信頼できる相手に引き継げ、買い手は既存生徒のいる拠点を獲得して未開拓エリアへ短期間で参入。背景・プロセス・引継ぎの実務を案件の振り返りをしながらご紹介します。

学習塾事業概要


・所在地:東京都23区東部(住宅街立地)
・指導形態:個別指導
・生徒数:約20名
・売上高:年商約800万円
・営業利益:約▲200万円
・運営年数:約10年
・譲渡金額:0〜200万円


・自走可否:現状は教室長不在。買い手が教室長人材を採用し運営を引き継ぐ設計
・強み:23区の住宅街立地/譲渡金が比較的リーズナブルで初期負担が軽い
・講師体制:アルバイト5名
・保護者周知・同意:売り手同席の保護者説明会・個別面談で安心感を醸成
・賃貸契約:解約→新規契約。売り手・買い手・大家が対面で条件交渉
・移転前提:なし

事業譲渡を決めたきっかけ


モチベーション低下と廃業コストの懸念

今回ご紹介する学習塾は開業から約10年。売り手さまは学習塾運営へのモチベーション低下を自覚し、廃業も検討していました。しかし、什器撤去や原状回復にかかる費用負担、通う生徒・働く講師への影響を考えた時にセカチャレのサービスを知り、お問い合わせをいただきました。


また、モチベーション低下の理由とは別に、他で注力したい事業があり、時間と資源の再配分が必要でした。地域の学びの場を残しつつ、自身は次の挑戦へ移る――事業譲渡は双方を両立させる手段になるということも、譲渡を検討することになった要因となりました。

タイムライン(秋の相談から約1ヶ月で契約)

2024年秋に初回のご面談。資料が全て整ってすぐに、以前から弊社でお付き合いのあった親和性の高い買い手候補(大手FC塾)をご紹介し、オンライン面談→現地面談→意向表明→基本合意へ。最終契約まで約1ヶ月のスピードで進み、2025年2月に事業譲渡契約を締結しました。

募集開始〜基本合意


市場で刺さった強み

募集をスタートしてからは、何件かの前向きな問い合わせがすぐにありました。既存顧客が一定数在籍し、23区の住宅街に根差した立地は安定感が評価されたことや、家賃水準も相対的に抑えられており、適切な運営で黒字転換の余地が見込める点が買い手さまの関心を集めたようです。

候補者像と反応

今回、お話を進めてくださることになった買い手さまは、関西を主戦場とする大手FC塾。近年は首都圏への出店を加速しており、狙っていた商圏と本案件の立地が合致。そのように伺っていたのですぐにお声がけをし、業態(個別指導)も既存のFCオペレーションと噛み合い、話はトントン拍子で前進しました。

選定フローと現地面談

オンライン面談で全体像と課題を共有後、現地でレイアウト・備品・教材や運用の実態をチェック。競合状況は事前資料で把握し、現地では通塾導線や生活動線の体感を擦り合わせました。保護者には売り手さま同席で説明会や面談を実施、きちんと説明を行い、継続通塾への不安を事前に解消しています。

DD〜事業譲渡契約


デューデリジェンスの論点

生徒ごとの月謝構成とLTVを精査し、既存収益の維持可能性を評価。賃貸借契約は解約→新規のため、保証会社審査・原状回復の取り扱い・契約条件の変更有無を確認しました。今回は買い手さまの規模が大きかったことや案件自体の規模がそこまで高くなかったことから、金融機関からの融資は利用していません。

スキーム選定と契約条件

売り手さまは法人で別事業も運営しており、スキームは事業譲渡を採用。アーンアウト等の複雑な条件は設けず、例外規定として「大家が承継を認めない」「家賃の大幅増」などの場合は契約見直しとする条項を設定し、実務上何か外部要因で譲渡に問題が発生した場合は見直すことができるという前提の基で話を進めていきました。

スピード成約を実現した要因

立地・業態・商圏が買い手の成長戦略と一致していたこと、意思決定の速い体制、売り手さま・買い手さま・家主の三者での早期対話、保護者への丁寧な説明準備――これらが約1ヶ月のスピード成約を後押ししました。

クロージング準備と引継ぎ(PMI)


人:アルバイト講師5名に状況を説明し、雇用契約を巻き直してスムーズに合流。買い手は教室長人材を採用し、既存の運営知見とFC標準オペレーションを統合することに力を入れていました。

顧客:保護者説明会や個別面談を売り手同席で実施。「基本方針・料金体系は踏襲する」ことを明示し、離脱はゼロでスタート。

契約:賃貸名義変更・保証審査・各種サプライヤ切替は計画通り完了。

IT・運用:学習システム、広告アカウント、Googleビジネスプロフィール等の移管を実施。

広報:外向けの大きな発信は控え、在籍生徒・保護者への個別周知を優先。

固有対応:ブランド切替は段階的に行い、現場の混乱を避ける運用としました。

リスクと対応


賃貸条件の変動リスク

→ 売り手・買い手が同席し、家主と対面で面談。事業計画と人柄を丁寧に伝え、応援を得られる関係性を構築(時期:最終契約後すぐ〜クロージング前)。


生徒離脱の可能性

→ 大手FCが責任をもって承継する安心感を明確化。既存の料金体系等は踏襲する方針を説明し、通塾の継続意思を確認。


ブランド変更による戸惑い

→ 段階的な切替と個別周知で混乱を回避。教室の見え方の変更は最小限から着手し、体験価値の連続性を担保。

学習塾の譲渡における再現ポイント


賃貸借契約の切替は、売り手・買い手・家主の三者で早期に協議し、信頼形成と条件整理を同時に進めることが重要です。学習塾の譲渡において、賃貸借契約の切り替えは大きなハードルとなることがあります。


保護者説明は新旧同席で実施し、「何が変わらず、何がいつ変わるのか」を具体的に伝えて離脱を抑止する。


既存顧客基盤×FCオペレーションの統合は、まず“踏襲”を優先。KPIや運営指標を見ながら、改善は小さく素早く回す。

終わりに


既存教室の買収は、ゼロからの出店に比べて初期集客の不確実性を抑え、商圏適合を検証しながら拡大できる方法です。本件は、個人塾の歴史と地域密着の強みを継承しつつ、FCの運営力でスケールを見込む好例となりました。


売却・承継をご検討中の方は、まずは弊社が作成している概要書(生徒ごとの月謝・LTV、賃貸条件、講師体制)をご覧いただき、情報を整理したうえで関係者との合意形成の土台を整えるところから始めてみてください。


この記事の著者



取締役 M&Aアドバイザー 高木直人


埼玉大学教育学部卒業後、大手教育系企業、私立中高一貫校講師を経て、株式会社インフィニティライフに参画。学習塾事業、学習塾M&A事業の責任者として、100件以上の学習塾案件を支援、40件程度を成約に導いた。2023年に株式会社バトンズが選ぶベストアドバイザー賞にノミネート。


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★株式会社バトンズが主催する2025年M&Aプロフェッショナルアワードにて「成約賞」を受賞しました。

https://batonz.jp/learn/18063/