こんにちは!「学習塾売却のセカチャレ」を運営する株式会社インフィニティライフの高木です。
セカチャレは、学習塾専門の株式・持分・事業譲渡のサポートサービスとして、これまで150件以上の学習塾の承継に携わってきました。学習塾経営者さまの中には「売却や事業譲渡は大企業の話」と感じる方も少なくありませんが、個人塾や小規模法人でも“生徒・講師の居場所を守りながらバトンをつなぐ”現実的な選択肢になり得ます。
今回は、大阪府で運営する複数教室の一部について、売り手さま(近畿~中四国で展開する運営会社)が「目が届きにくい教室」を切り離し、買い手さまへ事業譲渡した事例です。撤退費用を抑えつつ、生徒離脱ゼロで引継ぎ後は買い手さまの尽力により生徒数が増加。本件の譲渡に至るまでの背景・プロセス・引継ぎの実務をご紹介します。
目次
・所在地:大阪府
・指導形態:個別指導
・生徒数:約30名
・売上高:年商約1,000万円
・営業利益:約200万円
・運営年数:約5年
・譲渡金額:0〜200万円
・自走可否:買い手さま側に教室長人材が在籍。引継ぎ後は当該人材が教室長として運営
・強み:常時30〜40名の在籍で経営基盤がある/開校から年数が浅く内装・什器が綺麗で新規開校より初期負担が軽い
・講師体制:アルバイト3名
・保護者周知、同意:売り手さま同席の保護者説明会・個別面談で安心感を醸成
・賃貸契約:解約→新規。初期対応は売り手さまが主導し、その後スムーズに買い手さまへ引継ぎ
・移転前提:なし
売り手さまは中四国を中心に多数教室を運営し、近畿にも複数展開。しかし本部との距離や管理リソースの制約から、一部教室は十分に目が行き届かない状況が生まれていました。
当該教室の閉校も検討しましたが、撤退には原状回復・什器撤去などの費用が伴います。知人の紹介でセカチャレを知り、「撤退コストを抑えつつ地域の学びの場を残せる」選択肢として第三者への事業譲渡を検討。2025年1月にご相談を受け、セカチャレでの支援が始まりました。
当該教室は在籍が30名を超え、開校年数も浅く状態が良好。新規開校と同等の初期コストで、開始時点から30〜40名の基盤が得られるという点が市場で評価されました。
候補者には、既存で教室を運営する企業の増店ニーズと、独立志望者の「1教室目」に適した条件が同時に刺さる構造。
担当者面談ののち、買い手さまとオンラインでTOP面談→現地面談へ。意向表明から約1週間で基本合意に至り、最終契約まで約1ヶ月というスピードでまとまりました。買い手さまは大学在学時から教育業界に携わってきた若手経営者で、自身の教室運営に強い意欲をお持ちでした。重視したのは「在籍生徒を現状のまま引き継げること」。セカチャレは保護者コミュニケーションの設計と現場オペレーションの踏襲計画を整え、合意形成を後押ししました。
デューデリジェンスでは、生徒ごとの月謝構成やLTVを精査し、稼働コマ・講師配置・時間割の実態を確認。賃貸は解約→新規のため、保証会社審査や原状回復の取り扱いを事前に整理しておきました。融資は想定せず、キャッシュでのスムーズなクロージングを目指す進行です。
スキームは、売り手さま法人の複数拠点の一部切り離しであるため事業譲渡を選択。契約上の主条件として、他教室との兼ね合いや譲渡後のレピュテーションリスクを鑑み、ブランド名は買い手さまのオリジナルへ変更することを合意しました。
例外規定として、大家が承継を認めない・家賃が大幅増となる場合は契約見直しとする条件を設定。結果として当該事象は発生せず、予定通りのクロージングに至っています。
人:アルバイト講師の皆さんに状況を丁寧に説明し、買い手さま側で雇用契約を巻き直し。
教室長人材は買い手さま側から着任し、何度も教室に足を運んだりする中で、既存の運用ノウハウと新ブランドの標準オペを統合していきました。
顧客:保護者説明会・個別面談に売り手さまも同席。「基本方針・料金体系は当面踏襲」「担当が見える」「連絡導線が変わらない」ことを明確化し、安心を確保。結果として離脱はゼロでスタートしました。
契約:賃貸名義変更・保証審査・サプライヤ切替は計画通り完了。IT/運用では学習システム、広告アカウント、Googleビジネスプロフィール等の移管を実施。外向きの大きな広報は行わず、在籍生徒・保護者への個別周知を優先して混乱を回避しました。
賃貸条件の変動リスク
→ 初期対応は売り手さまが主導し、買い手さまへ綿密に引継ぎ。大家・管理会社へ三者で丁寧に説明し、解約新規の条件をスムーズに整理(時期:最終契約後すぐ〜クロージング前)。
生徒離脱の可能性
→ 買い手さまが保護者面談に同席し、運営の連続性と改善の方向性を言語化。既存の料金体系等は当面踏襲する方針を明確にして安心感を醸成。
ブランド変更による困惑
→ 段階的な切替方針を説明。教室の見え方の変更は最小限から始め、学習体験の連続性を担保。
・複数拠点の一部切り離しは、撤退費用を抑えながら地域の学びを残せる選択肢。賃貸やサプライヤなど「現場の名義変更」を先に設計しておくと躓きにくい。
・保護者説明は売り手さま・買い手さま同席で、「何が変わらず、何がいつ変わるのか」を一貫して伝える。離脱抑止の最有力打ち手。
・新ブランド運営は“踏襲→微修正→標準化”の順に。KPI(在籍数・問い合わせ・稼働コマ)で小さく検証しながら改善を積み上げる。
本件は、売り手さまが管理リソースの観点から「手放すべき教室」を見極め、買い手さまが既存の顧客基盤を引き継ぎつつ自社のオペレーションへ統合した好例です。
結果として、離脱ゼロでのスタートに加え、その後は生徒数の増加を実現しています。複数教室のポートフォリオ再編や、独立・多店舗展開を検討されている方は、まず該当教室の在籍・月謝構成・LTV、賃貸条件、講師体制を棚卸しし、関係者の合意形成を設計するところから始めてみてください。
また、それらの過程においても、セカチャレでは支援をしておりますので、そのような状態に至っておらずとも、お気軽にお問い合わせください。
取締役 M&Aアドバイザー 高木直人
埼玉大学教育学部卒業後、大手教育系企業、私立中高一貫校講師を経て、株式会社インフィニティライフに参画。学習塾事業、学習塾M&A事業の責任者として、100件以上の学習塾案件を支援、40件程度を成約に導いた。2023年に株式会社バトンズが選ぶベストアドバイザー賞にノミネート。
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