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「計算式ではこの金額になるはずなのに、提示された評価額がそれより低いのはなぜか」 M&Aの交渉の場で、算出されたベースの金額から「〇〇の懸念があるため、これだけの減額をお願いしたい」と提示され、戸惑う経営者様は少なくありません。
買い手は、計算上の数字は認めつつも、そこに含まれる「将来のコスト」や「リスクの不透明さ」をシビアに金額換算し、評価を下げようとする力学が働きます。これを放置したままでは、長年築き上げた塾の価値を、本来の姿で評価してもらうことはできません。
今回はアドバイザーの吉田が、査定時に評価を下げないために知っておくべき落とし穴と、価値を守り抜くための回避策について解説します。
買い手は「買収後に追加コストが発生すること」を警戒します。以下の項目は、評価額全体から具体的な金額を差し引かれる直接的な要因となりやすいため、事前の対策が重要です。
個人塾に多いケースですが、法定の加入条件を満たしている講師が社会保険に未加入であったり、残業代の算出が曖昧であったりする場合です。 買い手は「買収後にこれらを適正化すると、年間〇〇万円のコスト増になる」と計算し、その合計額をあらかじめ評価額から差し引く提案をしてきます。
内装の著しい汚れや、長年放置された古い備品、あるいは賃貸契約上の原状回復義務が不透明な場合です。 買い手は「看板の架け替えや壁紙の張り替え、老朽化したエアコンの交換にこれだけの費用がかかる」と見積もり、その投資額を譲渡代金から差し引く交渉をしてきます。
「オーナー先生がいるから通っている」という生徒が多すぎる場合、買い手は「オーナーがいなくなれば生徒の3割が辞める可能性がある」という予測を立てます。 この「想定される売上減少分」をリスクとして評価額から差し引かれたり、あるいは譲渡代金の一部を「一定期間の生徒数維持」を条件とした後払いに設定されたりすることがあります。
「いくらで売るか」を考える前に、まずは「今ある価値をいかに下げさせないか」という視点が、最終的な手残り金額を最大化します。
【価値を下げさせないためのチェックリスト】
- 退会率のデータ証明: 「生徒が辞めない塾」であることを過去3年のデータで示し、将来の売上リスクを払拭する。
- 紹介入塾の比率: 広告宣伝費に頼らない集客ルートがあることを証明し、買収後の集客コスト増への不安を消す。
- 設備・什器の台帳管理: リース品の残債や備品の所有権を整理し、買い手が後から「不測の負債」を指摘する隙を与えない。
第4回で解説したような「赤字塾や小規模塾」の場合でも、オーナー様が「譲渡後、〇ヶ月間は責任を持って並走し、生徒と講師を繋ぎます」と具体的に提案することで、買い手の「リスクへの懸念」を大幅に下げることができます。
「オーナーが去った後の混乱」という不透明なリスクを、オーナー自らのサポートによって解消する。この姿勢こそが、交渉において主導権を握り、評価を下げさせないための強力な切り札となります。
査定の依頼を出す前に、一度以下の視点で自塾をチェックしてみてください。
塾の譲渡評価額を左右するのは、計算式のロジックそのもの以上に、買い手に「これなら追加コストがかからない」「リスクが低い」と確信させるための準備です。
「うちの塾、今のままだと本来の価値より低く評価されないかな?」 「少しでも正当に評価してもらうために、今すぐできる準備を知りたい」
そんな不安があれば、ぜひ一度ご相談ください。貴社の塾をプロの視点で分析し、培ってきた価値を1円も下げさせないための、最高の磨き上げをサポートさせていただきます。
この記事の著者

M&Aアドバイザー 吉田諭
首都大学東京都市教養学部機械工コース(東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科)卒業後、大手教育系企業、建材メーカーを経て、株式会社インフィニティライフに参画。学習塾M&A事業のアドバイザーとして、80件以上の学習塾案件を支援、30件程度を成約に導いた。
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