こんにちは、セカチャレを運営する株式会社インフィニティライフの高木です。
今回は譲渡契約の締結後、引き継ぎに関わるお話です。
学習塾のM&A・事業承継において、売手さまと買手さまの間でどれほど完璧な譲渡契約が結ばれたとしても、現場での引き継ぎに失敗すれば、すべてが台無しになってしまうリスクがあります。
その成否を分ける最重要局面が、生徒さまや保護者さま、そして現場の講師陣への「運営交代のアナウンス」です。
学習塾は「人と人との信頼関係」で成り立つビジネスだからこそ、伝える順番やタイミング、表現の一つ一つに繊細な配慮が求められます。
今回は、退塾ドミノや交渉破断という最悪のシナリオを防ぎ、全員が安心して新体制を迎えるための実践的なアナウンス戦略を、今までの経験を基に、解説します。
目次
もし運営交代のお話が不適切なタイミングや表現で伝わってしまった場合、学習塾の経営には以下のようなダメージが発生する可能性があります。
保護者さまや生徒さまが「塾がなくなる」「大きく変わってしまう」と誤解し、不安から退塾者が続出する可能性があります。また、入塾を検討していた検討層からも「体制が変わるなら、別の塾にしておこう」と敬遠されてしまいます。
人づてや間接的な噂で事実を知った講師は、経営陣への強い不信感を抱きます。講師間の関係性が強ければ、その話は瞬く間に広がっていき、その結果、一斉に退職してしまうというリスクもゼロではありません。
少し違った視点ですが、これらによる生徒減少や講師離職がM&Aの交渉中に発生すると、買手さまが想定していた前提条件が変わってしまいます。結果として、それまで順調だったM&Aの交渉自体が白紙に戻ってしまうケースもあるのです。
公式な告知を行うのは、最終的な譲渡契約(SPA)を締結してから、実際の引き渡し(経営権の移動)が行われるまでの間のタイミングが鉄則です。契約が確定する前に噂が広まることは絶対に避けなければなりません。
理想的なプロセスは、アナウンスの前に「顔合わせ」の期間を作ることです。買手さまが先に運営へ少しずつ顔を出し、日々の送り迎えや授業前後の時間でご家庭とコミュニケーションを図っておきます。「よく見かける親しみやすい人」という関係性を作った上で正式なアナウンスを行うことが、最も安心感を与える流れです。
少し話はそれますが、そもそも弊社にお問い合わせいただいたタイミングですでに告知をしてしまっているケースもあります。その場合は、今後引き継ぎができた場合でも、ある程度生徒が離脱してしまうことを前提に進めていくような流れになります。
保護者さまへ伝える書面や面談の場では、ただ「経営者が変わります」と事実を伝えるだけでは不安にさせてしまう可能性た高いと感じます。以下の2点に注力しながら進めていくことで、結果は大きく変わるのではないかと感じています。
・「少しずつバトンタッチしていく」という主張
売手さまが「明日から完全にいなくなります」という伝え方は、一気に変化が起きるという感覚を与えてしまいます。。自身も継続してしばらく現場に携わり、少しずつ引き継いでいくというスタンスを強調することで、保護者さまの心理的な負担を和らげます。
・売手さまから買手さまへの太鼓判
長年信頼されてきた売手さま自身の口から、「次のオーナーは、私の塾の理念を深く理解し、生徒たちを安心して任せられる素晴らしい方です」と、次の経営者が信頼に足る人物であることをしっかりと説明します。信頼を寄せる人が言っているのだから大丈夫かな、と心理ハードルを下げる効果が期待できます。
アナウンス以降の引き継ぎ期間中、新旧オーナーの動き方は対照的になります。
売手さまは、保護者さまの前で「今後もサポートとして残ります」という姿勢を見せつつ、実務面では少しずつ現場を離れながら、綺麗にフェードアウトしていきます。
逆に買手さまは、日常の接点を増やしながら少しずつご家庭との距離を詰めていき、教室の新しいリーダーとしての認知を確立させていきます。
そうすることで、変化を大きく感じさせることなく、結局何も変わらなかったね、という印象を与えることが可能です。
現場の講師(社員やアルバイト)への伝達は、ご家庭へ発表する少し前のタイミングで行うべきです。
ご家庭より先に事情を話し、新体制のビジョンを共有して、事前に「仲間」になっておくことが極めて重要です。そうすることで、正式発表後に生徒さまや保護者さまから現場の講師へ「塾長変わるって本当ですか?」と質問があった際にも、講師たちが動揺せず、前向きな言葉で適切な対応を取れるようになります。
もちろん、講師から先に生徒に話がいかないように管理をすることは重要です。生徒はそのような話を聞いた場合、すぐに保護者に話をしてしまうと考えます。そうならないよう、きちんと講師には情報管理を徹底するように指導しましょう。
人生の懸かった受験生に対しては、一律の書面通知だけでなく、個別の配慮が必要不可欠です。
まずは全体へ伝える前に、受験生の保護者さまを対象とした説明の場を個別に設けることが望ましいです。さらに、可能であれば「受験が終わるまでは、指導カリキュラムや担当講師などの現場体制は今までと一切変わらない」という確約を伝えることで、直前期のデリケートな受験生にストレスを与えない環境を維持します。
受験生は、受験までの期間が短ければ短いほど、きちんとした対応が必要になります。場合によっては、下の学年の生徒や保護者が「先輩は受験のタイミングで蔑ろにされてしまった」と感じ、自身が受験生となるタイミングで離脱してしまう可能性もでてきます。
「自分が辞めることで、生徒や保護者さまを裏切ることになるのではないか」と強い罪悪感や不安を抱える売手さまはとても多いです。また、「自分が引き継いだら、生徒たちが一気に辞めてしまうのではないか」と考える買手さまもいらっしゃいます。
しかし、数多くの承継を見届けてきた経験から言えば、なんだかんだ言いながらも、生徒さまも保護者さまも、売手さまがいなくなった後もそのまま変わらず塾を続けてくれることがほとんどです。
最初こそ少しの驚きはあるかもしれませんが、目の前の授業が楽しく、成績が伸びる環境が変わらなければ、子供たちはすぐに新しい体制に馴染んでいきます。きちんとした引き継ぎを実施できる関係性が売主、買主とで構築できれば、過度な心配は必要ありません。
大切なのは、誠実な順序で、関係者への対応をすることです。セカチャレでは、不動産や数字の実務だけでなく、こうした現場の繊細な心理コントロールまで支援することが可能です。迷っている方や、少しでも興味がある方は、是非ともお気軽にお問い合わせください。
この記事の著者

取締役 M&Aアドバイザー 高木直人
埼玉大学教育学部卒業後、大手教育系企業、私立中高一貫校講師を経て、株式会社インフィニティライフに参画。学習塾事業、学習塾M&A事業の責任者として、100件以上の学習塾案件を支援、40件程度を成約に導いた。2023年に株式会社バトンズが選ぶベストアドバイザー賞にノミネート。
・よくある質問
・お問い合わせはこちら
★株式会社インフィニティライフは、中小企業庁のM&A支援機関に登録しています。
https://ma-shienkikan.go.jp/search?corporate_name=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%